『第71回高松宮記念杯競輪(GI)レポート』 最終日編

和歌山競輪場で開催された「第71回高松宮記念杯競輪(GI)」は、6月21日に最終日を迎えた。

伝統の東西対抗は、東、西日本に分かれた戦いを勝ち抜いた9選手による決勝が行われた。

ただひとり3連勝で決勝に進んだ脇本雄太が、圧巻の逃走劇で完全優勝ナショナルチームでの活動を続ける脇本にとっては、今年の初場所となった高松宮記念杯で優勝賞金2940万円(副賞含む)を獲得し、年末に平塚で行われる「KEIRINグランプリ2020(GP)」の出場権をつかんだ。

勝戦 レース経過

 芦澤辰弘も勢い良く飛び出すが、内枠を生かした佐藤慎太郎が正攻法を確保。新田祐大-佐藤、松浦悠士-和田健太郎平原康多-芦澤、脇本雄太-稲川翔-稲垣裕之の並びで周回を重ねる。
 脇本の仕掛けに備えて、松浦、平原は赤板ホームから徐々に車間を切りはじめる。新田も誘導との車間を切り、松浦は1センターで波を作ってけん制するが、脇本はこれも構わず打鐘前2コーナーから一気のスパート。合わせて踏み込んだ平原が稲川、稲垣の間に割って入ると、8番手になった松浦は最終ホームから巻き返しに出る。松浦はバックで稲川のけん制も乗り越えるが、脇本のかかりの前にそこからなかなか差が詰まらない。半年ぶりの実戦でも圧巻の強さを見せた脇本は直線でもしっかりと踏み直して無傷の完全優勝。ゴール前で松浦をとらえた和田が2着に食い込んだ。

 
 
 

<4R>

 前受けの太田竜馬が突っ張りかけるが、堀内俊介が強引に押さえて出る。8番手まで下げて立て直しを強いられた稲毛健太は、打鐘で反撃を開始する。カマシ気味に仕掛けた稲毛が最終ホームで主導権を奪い、番手で後続との間合いを計った村上義弘(写真)が追い込んだ。
 「(稲毛は)結構、内で大きく押されたんで、引かざるを得なかった。でも、巻き返してくれた。だいぶ脚を使ってたんで、いつもの掛かりはなかったですね。でも、スピードは落ちなかった。(最終)4コーナーでもう1回伸びていったんで、(ラインで)決まるかなと」
 稲毛健太は1周半を踏んで、地元GIの最終日に完全燃焼した。
 「リズム通りいきたかったんですけど、太田君が(突っ張って)踏んだんでヤバいかなと。でも、最後は思い切りいけました。(4日間)脚は悪くなかったけど、フレームですね」

<8R>

諸橋愛選手
諸橋愛選手
 一本棒の7番手から清水裕友が踏み込む。清水は先行策に出た吉澤純平を最終バック手前でとらえ、諸橋愛(写真)のけん制を乗り越えた橋本強が続く。諸橋は最終2センターで田中誠をさばいて、外に持ち出して突き抜けた。
 「(橋本を)止めたかったけどね。そのあとは橋本がいっぱいそうだったから、外に行ったら思ったより伸びた。いつもなら外は行かないんだけど。調子が悪いなかで伸びたんで良かった」
 「本当ならジャンで叩かないと」と、3着に沈んだ清水裕は、仕掛け遅れを反省する。
 「いまの状態が動きにあらわれている。(3日目からフレームを換えて)自転車の感じはすこぶるいいんですけど…。脚じゃないですか、鍛え直します」

<9R>

 後ろ攻めから岩本俊介が先制。山本伸一は最終ホーム、5番手から仕掛けるも岩本に並びかけることはできない。前団のモツれをしり目に1センターからまくった中川誠一郎(写真)が前団をまとめて飲み込んだ。
 「昨日(3日目)は待ってしまって失敗したので、今日(最終日)は仕掛けたかった。とりあえず仕掛けないとって思っていたし、結果よりも仕掛けられたことが良かった。踏み出した瞬間に東口(善朋)君のあおりがあったので、それがなければもっとすんなり行けたと思う。いつもなら最終日に向けて状態が上がっていくのに、今回はレース間隔が詰まっているせいか、ずっと変わらない感じでした」
 岩本の逃げに乗った萩原孝之が、好展開を生かして2着に食い込んだ。
 「岩本君が強かったし、付いていただけですよ。岩本はいい掛かりをしていたので、誰も来ないだろうなって思っていた。今開催は4日間通していい開催でした」

<10R>

 4車のラインができあがった櫻井正孝が、赤板1コーナーで飛び出してそのまま緩めることなく駆ける。5番手に三谷竜生が入り、河端朋之が8番手の一本棒でレースは流れる。打鐘の4コーナーで三谷が踏み込んで、小松崎大地も合わせて番手から出る。小松崎に続いた山崎芳仁(写真)は、三谷を外に弾く。今度は最終2コーナー手前でまくった河端が迫ると、山崎が小松崎後位から踏んで直線で抜け出した。
 「(小松崎)大地も1周行ってるからタレてきていた。外に河端が来てるのがわかったんで、もう出ていくしかなかった。(ああいう展開になったら北日本の)誰かが1着を取らないと。自分の脚自体は悪くないけど。ラインのおかげですよね」
 山崎に流れ込んだ大槻寛徳が2着に入った。
 「自分は(4番手だったんで展開的には)前の2人がと思ってました。(櫻井が)頑張ってたし、(同県の後輩として)頼もしいですね。自分は日に日に体調が違ったりして、3日目はあんまり良くなかったけど、最終日は良かった。年齢のせいにはしたくないですけど」

<11R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 打鐘の3コーナーで渡邉雄太が飛び出してレースを支配すると、番手を回った郡司浩平(写真)が絶好展開を生かして抜け出した。
 「(渡邉)雄太が思い切って行ってくれて、鈴木(裕)さんも(浅井康太に)からまれたけど外で粘ってくれてラインの力を感じました。(今シリーズは)準決に関してはやることをやっての結果なので力不足。最低でも決勝に乗りたかったけど、力を出さずに終わるのが嫌だった。力を出し切っての(準決)5着なので納得です。脇本(雄太)さんに関しては戦っていないので何とも言えないけど、少しでも脚力が近づけば、競輪なのでそれ以外で補えると思う。少しでも脚力を付けていきたいです」
 逃げた渡邉雄太は、3着でシリーズを終えた。
 「郡司さんを付けていたし、自分が先行するのが一番間違いないかなと。死ぬ気で踏んでいましたけど、意外と最後までもちました。今シリーズは参加する前に調子が悪くて、それから考えるとやった方だと思う」

<12R>

 打鐘前2コーナーの下りを使って一気にスパートした脇本雄太(写真)は、松浦悠士の巻き返しもシャットアウトする完ぺきな逃走劇。連日、圧巻の強さを見せて、今年初の実戦を無傷の4連勝で締めくくった。
 「今年一発目の競輪だったので、緊張のなかで完全優勝できてうれしい。後ろ攻めだったので、今日(決勝)も(準決と)同じことをしようと仕掛けるタイミングは決めていました。ペースで先行で逃げ切れるようにと思った。向かい風のなかでしっかり踏めました。みんなの自転車の影が見えたので気が抜けない状態でした。またグランプリを走れてうれしく思う。オールスターまで走れることは決まっているので、目の前のあっせんでアピールしたい」
 松浦マークから直線で伸びた和田健太郎が、2着に食い込んだ。
 「僕は人の後ろだったので若干、余裕がありました。中を踏もうかどうしようか考えていて、とりあえず締めておけば平原君も入ってこないだろうし。何回かGIの決勝に乗っているけど表彰台は初めて。ホッとしています。次は南関の自力選手と勝ち上がりたい」
 3着の松浦悠士は、悔しさをにじませた。
 「自分が(脇本ラインに)飛び付くことを考えていたけど、平原さんが飛び付く感じがしたんで急きょ自力にした。イケると思ったけど、脇本さんが余力を残していた。すごい踏み直された」

6月27日~30日の日程で取手競輪場にて開設70周年記念「水戸黄門賞」が開催されます。
新型コロナウイルス感染症拡大防止策として、7月~9月までのGIIIは、7車立て・9R制で開催されるため、従来の9車によるGIIIはひとまず今回が最後。
「原則地区内あっせん」となっており、関東・北日本南関東勢による争いとなるが、S班の平原康多を中心に層の厚い関東勢が優勝争いをリードしそう。
地元勢の、吉澤純平・吉田拓矢・杉森輝大の自力型にも要注目!!
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