『奈良競輪開設69周年記念(GIII)レポート』 最終日編

奈良競輪開設69周年記念「春日賞争覇戦」が2月27~3月1日の日程で開催された。

最終日12Rに行われた決勝戦は内をすくって打鐘過ぎ4コーナーから主導権を握った平原康多マークの松谷秀幸が2017年4月西武園以来、自身3度目となる記念優勝。新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的とした、イベント開催規模縮小の要請を受け、無観客での開催実施となったシリーズを制した。

決勝戦 レース経過

 号砲で飛び出した平原康多が前を取り、松谷秀幸-伊勢崎彰大-萩原孝之の南関勢が続き4車が前受け。中団に三谷竜生-坂口晃輔の中近コンビ。宮本隼輔-小倉竜二-湊聖二の中四国ラインが後ろ攻めで周回を重ねる。
 青板のホームから動いた宮本に合わせて三谷が上昇し、バックで先に誘導員を降ろしてハナに立つ。そこを宮本が押さえて主導権。6番手になった平原は赤板の2コーナーから仕掛けて三谷の横まで追い上げると、打鐘で内に切り込み中四国ラインをすくって主導権を奪取する。ライン3番手の伊勢崎は連係を外してしまい、すかさず降りた宮本が3番手、平原-松谷と同じ進路を取った三谷が4番手で最終回へ。態勢を整えた宮本はバックから仕掛けるが、松谷のけん制もあって車は進まず、三谷も不発に。小倉は2センターから内のコースを踏んで平原と松谷の間をゴール手前で割ろうとしたが、絶好の番手で4コーナーを回った松谷が、内を締めながらきっちり平原をとらえてVを飾った。平原が2着に粘ってラインでワンツー。小倉は3着まで。

松谷秀幸選手
松谷秀幸選手

 無傷で勝ち上がった平原康多、宮本隼輔に地元記念2度目の優勝を狙う三谷竜生が激突した決勝戦。打鐘前2コーナーから仕掛けた平原が打鐘から内に切り込んで先頭に立った時点で勝負の大勢は決していた。宮本、三谷の巻き返しは叶わず、番手絶好の松谷秀幸(写真)がゴール前で平原をとらえた。
 「平原はあこがれの選手。付くときはどういう動きをするのか後ろで勉強したいし、決勝もすごく勉強になった。さすがだなって。あらためて強さを感じました」
 平原の番手は昨年の競輪祭一次予選1走目以来。「2回とも先行ですから。まくりのイメージがあるけど、2回ついて2回先行。僕は両方1着なんで」。平原との相性の良さに目を丸くする。
 1着も平原の番手を回った競輪祭から遠ざかっていた。競輪祭直後に腰椎椎間板ヘルニアを発症し、1月に手術。復帰2戦目での優勝だった。
 「腰はもう大丈夫です。今年は出足でつまづいたけど、全日本選抜は人の後ろでレース勘が戻ってきた。全日本選抜までは練習がほとんどできなかったけど、終わって師匠(佐々木龍也)に練習をみてもらって良くなった。師匠には『結果にこだわって、勝ってこい』と言われたし、たぶん喜んでくれると思う」
 今年は平塚でグランプリが開催されるが、当面の目標はGIファイナルに勝ち上がること。「今までは準決止まりなんで。郡司(浩平)に追いつけるように、付いていけるように頑張ります」。3度目の記念優勝を飾った松谷がさらなる飛躍を誓った。

 レースの主導権を握ったのは平原康多。若い宮本を手玉に取る変幻自在のレース運びだった。
 「トリッキーってわけじゃないし、瞬時の判断ですね。宮本がスローピッチだったし、内ががら空きだったから。松谷も強いから、ジカじゃ(差される)。でも、あれを振り切れるようじゃなきゃダメだな。また頑張ります」

 平原に内をすくわれた中四国ラインは空中分解してしまう。ホームで三谷竜生後位を奪った小倉竜二はゴール前で中割りを狙った。
 「宮本はもう駆けて良かったですよね。駆けるところで駆けなかったから、そこを平原君が逃さなかった。しゃくられたので、僕は自分の位置を確保した。でも最後は内に入って踏まずに終わった。だったら外でどこまで行けるか体感しても良かったですね」

 4番手に入った三谷竜生だったが、最終2センターで小倉に内をすくわれたのが痛かった。
 「最終バックで見すぎたのもあったけど、後ろが小倉さんって気づかなかったのが。分かってればもう少し(対処できた)。分かってなかったので失敗しましたね」

 宮本隼輔にとってはまさかの展開だっただろう。「僕がもうちょっとはっきり踏んでれば…」。平原に一瞬の隙を突かれたレースを言葉は少なに振り返った。