【ROOKIES】伏兵・久米詩が飛び出す

■Pickup Rookie

 7月和歌山を完全優勝した吉岡詩織以上に、驚きのデビュー戦だったのは久米詩(写真)だろう。7月奈良を213着。“目標にしていた優勝には届かなかった”ものの、予選1は前受けからの突っ張り先行で、篠崎新純のまくりをこらえて2着に粘ると、予選2は同じく前受けからそのまま逃走劇を完遂してみせた。学生時代はテニスに打ち込み、競輪学校には適性での入校。競走訓練では意欲的に自力勝負に取り組んでいたとはいえ、21人中14位と決して目立つ存在ではなかった。チャレンジ戦線を席捲する115期勢とは対照的に、在校成績上位選手ですら苦戦している116期勢にあって、いち早く明るい材料を提供した。
 「卒業してからみっちりトレーニングしたので脚はついていると思います。デビュー戦は緊張しましたが、残り1周で駆けて残れるイメージで練習したので不安はありませんでした。自分のペースで行けて力は出し切れました」
 と胸を張る。父はGI戦線でも活躍し、日本競輪選手養成所の教官を務める康徳氏(70期・引退)という超良血。俄然、楽しみとなった2戦目は7月27日からの静岡。地元戦だが、児玉碧衣ら強豪が待ち構える。ガールズ最高峰のスピードレーサーとの遭遇は見ものだろう。


 

  5回目の試験で合格し、在校成績も52位と下位に甘んじた荒木貴大(写真)だが、地元の大宮で迎えたデビュー戦は314着と好スタートを切った。デビュー前には、“先行して1着を取ること”とシンプルに今後の目標を話していたが,3日間先行で勝負し、準決勝では逃げ切り初勝利。まさに有言実行のレース内容だった。
 「学校時代は先行することを意識していました。それで訓練成績はあまり良くなかったです。(デビュー戦は)出切ればチャンスあるかなと思ってましたが、初日にスカスカした感じだったので、2日目から自分の考えでギヤを重くしました(3・77から85に)。おかげで最後の踏み込みが初日よりもできました。今開催は連日先行できて内容が良かったと思うし、決勝もそれを見てくれて神奈川勢が付いてくれのは嬉しかった」
 苦労人だが、高校時代にJOCジュニアオリンピックのポイントレースで優勝するなど中距離種目のスペシャリストとして鳴らした実績の持ち主。確かな手応えをつかんで、2戦目以降も持ち前の強地脚を生かして長い距離を踏んで勝負していく。


 

  小倉ミッドナイトでは前回紹介した伊藤颯馬の先まくりを乗り越えられず、デビュー戦の取手に続き112着と悔しい結果に終わった谷和也(写真)。しかし、ナンバーワンの坂井洋を相手に大逃げを打った取手決勝は今後の活躍を予感させるに十分なインパクトを残した。
 「今の目標はルーキーチャンピオンレースに出ること。デビュー戦の初日は緊張したけど、2日目、3日目はうまく気持ちをコントロールできたと思います。決勝は学校時代の同部屋の坂井さんに負けて悔しかったけど、攻めた結果なので。力を付けるしかないですね。小倉の決勝も伊藤君に先まくりを打たれて、それを乗り越えられなかったのは自分の力不足です。この2場所は詰めの甘さが出ている。次が何度もある世界だとは思ってないけど、気持ちを切り替えてしっかり練習します」
 荒木貴大と同様に、高校時代はポイントレースなど中距離種目で活躍した地脚タイプで、掛かってからのスピードの加速力は強烈。“誘導を残して下げてしまったり”とまだまだ学ぶことも多いが、一戦、一戦無駄にせずテーマを持って戦っている姿勢は頼もしい。3走目の玉野FII(8月1日~)は小倉に続きミッドナイト開催。調整面の不安はなく、スケールの大きな走りで初優勝を決めたい。